「壁を超えたら損」は本当?

「年収の壁を超えると手取りが減るから、働き損になる」という話を聞いたことがある方は多いでしょう。たしかに壁を超えた直後は社会保険料や税金の負担が増え、手取りが一時的に減る「逆転ゾーン」が存在します。

しかし、さらに年収を増やしていけば、負担増を上回る収入を得られるようになり、手取りは壁を超える前の水準を回復します。この回復するラインが「逆転ポイント」です。

この記事では、106万の壁と130万の壁それぞれについて、具体的にいくら稼げば損しなくなるのかを解説します。

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106万の壁の逆転ポイント:年収約125万円

106万の壁を超えると、勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する義務が発生します。これまで配偶者の扶養内で保険料負担がゼロだった方にとって、年間約15万円の保険料負担が新たに生じます。

そのため、年収106万円を少し超えた程度では、壁を超える前よりも手取りが減ってしまいます。

では、いくらまで稼げば手取りが回復するのでしょうか。目安は年収約125万円です。年収125万円になると、増えた収入が社会保険料の負担を上回り、106万円未満のときの手取りと同水準に戻ります。

年収106万円の手取り内訳
項目独身配偶者あり
年間手取り90.5万円90.5万円
月間手取り7.5万円7.5万円
社会保険料15.5万円15.5万円
所得税0.0万円0.0万円
住民税0.0万円0.0万円
実効税率14.64%14.64%

※ 東京都在住・30歳・ボーナスなしで試算。概算値のため実際とは異なります。

年収125万円の手取り内訳
項目独身配偶者あり
年間手取り106.2万円106.2万円
月間手取り8.8万円8.8万円
社会保険料18.3万円18.3万円
所得税0.0万円0.0万円
住民税0.5万円0.5万円
実効税率15.07%15.07%

※ 東京都在住・30歳・ボーナスなしで試算。概算値のため実際とは異なります。

年収106万円から125万円の間が「逆転ゾーン」です。この範囲では働く時間を増やしても手取りが以前より少ないという状態になるため、注意が必要です。

130万の壁の逆転ポイント:年収約170万円

130万の壁は、配偶者の社会保険の扶養から外れるラインです。年収が130万円以上になると、自分で国民健康保険と国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入する必要があります。

国民健康保険と国民年金を自分で支払う場合、年間の負担額は約30万円前後になります。これは106万の壁のときよりも負担が大きいため、逆転ポイントも高くなります。

手取りが130万円未満のときと同水準に回復するのは、年収約170万円が目安です。

年収130万円の手取り内訳
項目独身配偶者あり
年間手取り110.1万円110.1万円
月間手取り9.2万円9.2万円
社会保険料19.4万円19.4万円
所得税0.0万円0.0万円
住民税0.5万円0.5万円
実効税率15.29%15.29%

※ 東京都在住・30歳・ボーナスなしで試算。概算値のため実際とは異なります。

年収170万円の手取り内訳
項目独身配偶者あり
年間手取り144.4万円144.5万円
月間手取り12.0万円12.0万円
社会保険料25.0万円25.0万円
所得税0.0万円0.0万円
住民税0.5万円0.5万円
実効税率15.04%15.02%

※ 東京都在住・30歳・ボーナスなしで試算。概算値のため実際とは異なります。

年収130万円から170万円の間は「逆転ゾーン」となり、働き損と感じやすい区間です。この区間を抜けるには、時給や労働時間を大きく引き上げる必要があります。

各壁の逆転ポイント一覧表

壁の種類壁の年収発生する負担逆転ポイント(目安)逆転ゾーンの幅
106万の壁約106万円厚生年金・健康保険(約15万円/年)約125万円約19万円
130万の壁130万円国保・国民年金(約30万円/年)約170万円約40万円
150万の壁150万円配偶者特別控除の段階的縮小約155万円約5万円
201万の壁約201万円配偶者特別控除の消失約210万円約9万円
注意

上記の逆転ポイントはあくまで目安です。実際の金額は、お住まいの自治体の保険料率、配偶者の年収、勤務先の企業規模などによって異なります。正確な金額はシミュレーションツールでご確認ください。

長期的に見ると壁を超えるメリットがある

逆転ゾーンの手取り減少だけに注目すると「損」に見えますが、長期的な視点では壁を超えるメリットも大きいです。

将来の年金が増える

厚生年金に加入すると、将来受け取る年金額が増えます。たとえば年収130万円で20年間厚生年金に加入した場合、国民年金だけの場合と比べて年間約13万円の年金が上乗せされます。生涯で受け取る年金総額を考えると、保険料の元は十分に取れます。

傷病手当金・出産手当金が受けられる

厚生年金に加入すると、健康保険の被保険者にもなります。これにより、病気やケガで働けないときの傷病手当金や、出産時の出産手当金を受け取る権利が得られます。扶養の範囲内ではこれらの手当は受けられません。

キャリアアップの機会が広がる

働く時間を制限しなくなることで、正社員登用やスキルアップの機会が増えます。収入の上限を気にせず働けるため、より責任のある仕事を任されやすくなり、時給アップにもつながります。

よくある質問

Q. 逆転ポイントは毎年変わりますか?

社会保険料率や税制は年度ごとに見直されるため、逆転ポイントの目安も多少変動します。ただし大きく変わることは少なく、数万円程度の差にとどまるのが一般的です。

Q. 夫の年収によって逆転ポイントは変わりますか?

配偶者特別控除の適用に影響するため、配偶者の年収が1,220万円を超える場合は控除がなくなり、逆転ポイントが変わる可能性があります。106万・130万の壁の逆転ポイントは、配偶者の年収にはほとんど影響されません。

Q. 逆転ゾーンを一気に飛び越えるのが難しい場合はどうすべきですか?

一気に年収を上げるのが難しい場合は、壁の手前で働き方を調整するのも合理的な選択肢です。ただし、長期的なキャリアや年金のメリットも考慮して判断することをおすすめします。

まとめ

年収の壁を超えると一時的に手取りが減る「逆転ゾーン」がありますが、106万の壁なら約125万円、130万の壁なら約170万円まで年収を上げれば手取りは回復します。また、社会保険加入による将来の年金増加や各種手当の受給権など、長期的なメリットも見逃せません。

自分の状況でいくらが逆転ポイントになるか、手取りナビのシミュレーションで確認してみましょう。

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