「扶養」には2種類ある【最重要ポイント】

「扶養に入る」「扶養を外れる」という言葉は日常的に使われますが、実は扶養には2つの異なる制度があります。

  • 税金の扶養(税扶養): 所得税・住民税の控除に関わる扶養
  • 社会保険の扶養(社保扶養): 健康保険・年金の被扶養者に関わる扶養

この2つは管轄する法律も判定基準もまったく別物です。にもかかわらず、どちらも「扶養」と呼ばれるため混同されやすく、これが年収の壁をめぐる最大の誤解の元になっています。

注意

「扶養を外れる=すべての優遇がなくなる」は間違いです。税扶養と社保扶養は別々に判定されるため、一方を外れてももう一方には影響しません。

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税金の扶養(税扶養)とは?

税扶養とは、配偶者や親族の収入が一定以下の場合に、扶養する側の所得税・住民税が軽減される制度です。

配偶者控除(年収103万円以下)

配偶者の給与年収が103万円以下(合計所得48万円以下)の場合、扶養する側は最大38万円の「配偶者控除」を受けられます。ただし、扶養する側の年収が1,220万円を超える場合は適用されません。

配偶者特別控除(年収150万円超〜201万円以下)

配偶者の年収が103万円を超えても、201万円以下であれば「配偶者特別控除」が適用されます。年収150万円までは配偶者控除と同額の38万円が控除され、150万円を超えると段階的に控除額が減少し、201万円で控除がゼロになります。

扶養控除(16歳以上の親族)

16歳以上の親族(子・親など)の合計所得が48万円以下(給与年収103万円以下)であれば、扶養控除が適用されます。控除額は年齢区分によって異なり、一般扶養(16〜18歳)は38万円、特定扶養(19〜22歳)は63万円です。

判定基準は「所得」

税扶養の判定はその年の1月〜12月の確定した所得で行います。過去の実績ではなく、当年の結果で決まります。また、非課税通勤手当は収入に含みません。

社会保険の扶養(社保扶養)とは?

社保扶養とは、会社員や公務員の配偶者・親族が、自分で保険料を負担せずに健康保険と年金に加入できる制度です。

第3号被保険者(配偶者の年金)

会社員・公務員(第2号被保険者)に扶養される配偶者は、年収130万円未満であれば「第3号被保険者」として国民年金に加入できます。保険料の自己負担はありません。

健康保険の被扶養者

年収130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)で、扶養する側の年収の2分の1未満であれば、健康保険の被扶養者として保険料負担なしで健康保険に加入できます。

判定基準は「今後の見込み年収」

税扶養と大きく異なるポイントとして、社保扶養は過去の実績ではなく今後12ヶ月間の見込み年収で判定されます。月額の目安は108,334円(130万円 / 12ヶ月)です。また、通勤手当は見込み年収に含まれます。

税扶養と社保扶養の違い一覧

項目税扶養社保扶養
基準額103万/150万/201万130万(60歳以上は180万)
判定基準1〜12月の実績所得今後の見込み年収
交通費含まない(非課税通勤手当)含む
判定時期年末調整・確定申告時随時(収入変動時)
管轄国税庁(税法)厚生労働省(社会保険法)
超えた場合控除額が段階的に減少保険料の自己負担が発生
影響を受ける人扶養する側(控除が減る)扶養される側(保険料が発生)

よくある間違い

「扶養を外れたら全部なくなる?」

税扶養と社保扶養は独立した制度です。たとえば年収が120万円になった場合、103万円を超えるため配偶者控除は適用されなくなりますが、配偶者特別控除は適用されます。一方、社保扶養は130万円未満なのでそのまま継続できます。「扶養を外れる」とひとまとめにせず、どちらの扶養のことかを確認することが大切です。

「103万円を超えたら社保も外れる?」

103万円は税金の扶養のラインであり、社会保険の扶養とは無関係です。社保扶養の基準は130万円です。103万円を超えても130万円未満であれば、社保扶養には影響しません。

「1月〜12月の年収で社保扶養が決まる?」

社保扶養の判定は年間の実績ではなく、今後の見込み年収です。たとえば9月に昇給して月収が108,334円を超えた場合、その時点から扶養を外れる可能性があります。過去の月収が低くても、今後の見込みで判定されます。

扶養を外れるタイミングと手続き

税扶養を外れる場合

税扶養は年末調整(または確定申告)で精算されるため、年の途中で特別な手続きは不要です。年末調整の際に配偶者の年収見込みを正しく申告します。年収が103万円を超えた場合、配偶者控除から配偶者特別控除に自動的に切り替わります。

社保扶養を外れる場合

社保扶養は年収が130万円を超える見込みになった時点で、速やかに届出が必要です。具体的な手続きは以下の通りです。

  1. 扶養する側の会社に「被扶養者異動届」を提出
  2. 扶養を外れた本人が国民健康保険・国民年金に加入(または勤務先の社会保険に加入)
  3. 届出が遅れた場合、保険料は遡って請求される可能性がある
情報

2023年10月から始まった「年収の壁・支援強化パッケージ」により、一時的に年収130万円を超えた場合でも事業主の証明があれば最大2年間は扶養を継続できるケースがあります。勤務先に確認してみましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. パート収入が120万円の場合、扶養はどうなりますか?

A. 税扶養については、103万円を超えるため配偶者控除は適用外ですが、配偶者特別控除(満額38万円)が適用されます。社保扶養については、130万円未満なので引き続き扶養に入れます。

Q. 交通費が月1万円あります。扶養の判定に影響しますか?

A. 税扶養の判定では非課税通勤手当は含まれません。一方、社保扶養では通勤手当を含めた総支給額で判定されます。交通費を含めて年収130万円を超える見込みになると、社保扶養を外れる可能性があります。

Q. 夫の年収が高い場合、扶養に影響はありますか?

A. 税扶養については、扶養する側の合計所得が1,000万円(年収約1,220万円)を超えると配偶者控除・配偶者特別控除が適用されなくなります。社保扶養については、扶養する側の年収は基本的に影響しません。

Q. フリーランスや自営業の配偶者も扶養に入れますか?

A. 税扶養は合計所得48万円以下であれば、働き方に関係なく適用されます。社保扶養は原則として年収130万円未満が条件ですが、自営業の場合は経費を差し引いた所得で判定されるケースがあり、加入する健康保険組合によって扱いが異なります。

まとめ

扶養には「税金の扶養」と「社会保険の扶養」の2種類があり、判定基準・基準額・手続き方法がそれぞれ異なります。税扶養は年間の実績所得で判定され、103万円・150万円・201万円が主な節目です。社保扶養は今後の見込み年収で判定され、130万円が基準です。どちらの扶養について話しているのかを正しく区別することが、年収の壁を理解する第一歩です。

103万の壁(税金の扶養ライン) 130万の壁(社保扶養ライン) 150万の壁(配偶者特別控除の満額ライン) 201万の壁(配偶者特別控除の上限) 年収の壁一覧まとめ
注意

本記事の内容は2026年3月時点の制度に基づく一般的な情報提供です。個別の税務・社会保険に関する判断については、税理士や社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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